まずは、経営法務との絡みで、各産業財産権の特徴を記載します。
<各産業財産権の特徴>
特許:技術的思想の創作のうち高度のもの
技術(アイデア、ノウハウ)
権利取得にかかる費用が高い
実用新案:技術的思想の創作
物品の形状・構造・組み合わせ(技術)
権利取得にかかる費用が安い
(実体審査なし)
意匠:デザイン
商標:ブランド
ロゴマークに化体した業務上の信用を保護
一度権利を取得すればずっと維持可能(10年毎に更新登録)
ロゴマークなので、権利侵害分かりやすい
1.中小企業の出願動向
中小企業の出願件数の割合:①商標61.4%>②実用新案55.8%>③意匠37.3%>④特許14.9%
自社ブランドの保護は重要なので商標が1位!
例えば、他社の品質の悪い製品に、自社のロゴマークを付して販売されているとしたら、自社製品の信用が失われ、売れなくなる恐れがありますよね。
それを防ぐため、自社のロゴを商標登録することで、ブランドの棄損を防ぎます。
また、ロゴマークは製品が壊れた時の買い替え需要の際も目印になるので、売上に直結するものとなります。
一方で、特許は取得に費用がかかる割に、アイデアなので、取得しても権利侵害を主張するのが難しいです(侵害者に対する過失の推定規定はありますが、実際、侵害を認めるケースは少ないのが実情です)。
よって、残念ながら、取得した特許を有効に活用できないケースが多いため、出願件数は少なくなっています。
一方で、実用新案については費用が安く、実体審査もないため、取得に対するハードルが低く、中小企業の出願件数は多くなっています。
2.出願件数の業種別比率
特許・意匠:製造業が多い
商標:サービス業が多い
製造業は自社製品を持っているので、製品の技術(アイデア)やデザインを保護する必要があります。
一方で、サービス業は、基本的に製品がないため、特許・意匠の割合は低く、その分商標の割合が増えています。
商標は全ての業種で必要ですが、サービス業自体の比率も増えているため、割合が増えています。
3.知的財産権ミックス
一つの製品(サービス)で、特許と意匠・商標を複合的に権利化することです。
他社の模倣に多面的に対抗できますが、費用がかかるため、中小企業での比率は少ないのが現状です。
(特許と商標)大企業:18.9%、中小企業:6.4%
(特許・意匠・商標全て)大企業:14.9%、中小企業:1.6%
4.特許の審査請求率
特許を取得するには、出願後に審査請求が必要です。
中小企業は権利取得して、使用することが前提のため、審査請求率が高いです。
一方で、大企業は防衛出願(他社の権利化を防止する出願)も含むため、出願後、実際に権利にしない特許出願もあり、審査請求率が低いです。
5.水際における模倣品の取締り
商標がダントツで多いです。(97.2%以上)
ロゴマークなので、侵害品が分かりやすいからです。
特許や実用新案は技術なので、侵害品が分かりにくいです。